ところで、私は病院が嫌いだ。
好きな人はそういないでしょうが。。。大病院も医院と呼ばれる場所もどちらも嫌だ。みんな下を向いて、肩を丸めて、ショボショボと歩き、暗い目をしている。もちろん調子が悪い人が集まるんだからそういう雰囲気になるんですけどね。
医者や看護師、医療者たちやボランティアの方々の心のあり方の利他的な崇高さ。そしてそうした弱い人の中にでも友情や美徳・ある種の感動があることは分かっているつもりだ。
それでも病院が嫌いだ。来たら二度と来たくない、もう二度と来たくないと感じる。
私は弱者が好きではない。強者になりたいと願う。強くなりたい。強く。もたれ合う絆より、武器を持って一人で最後まで立っていたい。弱者ばかりがくる病院なんで嫌いだ。そう願っても、病院に来ている私は、理由(どこか弱いとこ)があって来ているので、弱者の一人でしかない。
強者でありたい私のくせに、ネズミのようにコソコソおびえて病院の中を歩く。私は内心いくら強がっても、人には、あの弱った甘えた老婆と同じような存在に見えていることだろう。
最初は勢いよく採血だCTだと回っているつもりが、だんだん、疲れてくる。
エコーで技師の人が「最近はいかがですか?」と平板に問う。私は「更年期のせいか胸が張って痛いのです」と訴える。技師「そうですか、来週結果が出たら医師より詳細ご相談ください」とモニターを見て言う。ベルトコンベヤーみたい。はい、次。美容院の洗髪の「お熱いところないですか?」と同じ調子だ。
高齢化社会で患者が溢れかえっている病院。診てもらえるだけでありがたい。そんなに病院が嫌いなら行かなきゃいいのに。そしたら私の分の医療費が誰かに使われて役立つだろうに。なんて自己愛が強いんだろう。子供もいないのに長生きしたいなんてさ。
国民皆保険、こうして手厚い検診や検査を受けさせてもらえる日本国は本当に素晴らしい国である。いつまで続くかわからないけど。
もう5年はとうに過ぎたのに。毎年の風物詩になった半年に一度の癌検診が近づくにつれ、日々どんどん気が荒れてくるのが分かる。多くの癌経験者がそのようだと聞いた。私のように初期だったからとか、もっとステージが上だからとかあまり関係ない。同病の人に聞くと、病歴の深刻さに関わらず、10年たってもいちいち検診のたびに怯えるのよ、と笑う。その気持ちがよく分かる。
足元から何かが這い回り背中に恐怖がザ~!と襲うようなあの感覚。何度夜に目が覚めたろうか。病気直後は毎夜のように、今は月に一度あるかないかになった。
癌なんていまや誰でもなる病気だ。ましてや乳がんなんて女の成人病のひとつと言っていい。今はちゃんと治療したらたいていの人が治っている、再発は稀で、したところで現代の医療に打つ手は山ほどある。天変地異のようにもう騒ぐ時代じゃない。(そうでない重篤な人ももちろんいる)
そう知っていても、ちゃんとしめやかにやってくる、恐怖感。
そんな感情にこんなに浸れる自分は、なんて贅沢で暇で甘えているんだろう!
ともかく、病院に来ると気持ちが落ちるのだ。
加えて、昨日のメルカリの客がいつもにもましてすごかった。
スマホが壊れているのでアプリではなくて直接支払いたいという。カードはないという。相手の約束は二転三転する。
「明日振り込みます。これから振り込みます。やっぱり明後日振り込みます」
カードないスマホ壊れた、というその2点の言い訳で危険客なのは間違いないのですが。
私は一度でも顔を描いてしまうとその人のことが大好きになってしまうのだ。とても信じてしまい性善説に基づいて行動してしまいそうになる。とてもキレイで優しいやりとりをしたのだ。
しかし、振り込みはなされず、
「先週末に確かに振り込みましたよ!だからすぐ送付してください。よろしくお願いしますねー^^」
と何度も言ってくるのだが、そこは送らず口座に反映されるのを待っていた。
もちろん振り込まれるわけがないw
商品は送らなかったので、材料費と作業量が踏み倒されただけでよかった。そういう相手は損切りするに限る。それだけのことで、すぐに忘れてしまえばいいのだ。いつもはそうしている。が、検診前の不安な気持ちに今回は刺さった。
そういったあからさまな嘘や詐欺、悪意。それがどれだけ他人を疲弊させるか。アホ客に慣れている私でもそうなのだ。
他人を疑うというのは、辛いことだ。とてもとても人を疲れさせる。
だから人は、他人にお金を貸したくないし、嘘をつかれたり騙されたくないのだ。被害額が云々というより、信じてた人の悪意の悪びれなさ、その薄汚い暗さに傷つくのだ。加害側はそうは思わないようだが。
犯罪嗜好、育ちの民度、息を吐くようになんたら、というが、その毒気に触れると、あたって気持ちが落ちる。人を騙す人のオーラはガスと同じだ。ネットを通じてでも。
オーラや霊など私は一切見れないし、感じないけど、病院の暗い気持ちの患者群の間に座っていると、自分もいつしか、そんな気持ちに伝染させられる。この気持ちがお互いに影響するという事象。たとえば電車の車内の不機嫌はそうやってお互いに伝染しているという。
嘘つきの中にいるといつしか自分も嘘をつくようになる。弱い背中の丸い人の中にいるといつしか下を向いていることに慣れてしまう。
寸借詐欺など平気でやるような人。悪いと思っていないんだろう。人が描く時にどんなにその人のことを考えて祈り大事にするかなんて。(私の勝手な気持ちですが)想像もしないんだろう。安く、あわよくばタダで何かが欲しい。こいつお人よしだ騙してやれ。
その人は慣れていた。流れるような嘘。その人の回りの人もそういう人が多いのだろう。泥棒や万引き、暴力や虐待が日常の日々を過ごすのが当たりまえで、悪いとは思わないムードの集団の中で生きているのだろう。その人にバチが当たるとか回心するとか考える必要はない。ひょっとして、その人はメルカリで詐欺ばかりしていても、子供をかわいがったり、親の介護で日々大変なのかもしれない。
私だってどこかで誰かを傷つけているかもしれない。
だからその人を恨む時間など惜しいはずだ。
野良犬にパンくずを撒いてやったくらいに考えればいい。哀れな人々なのだ。
病院特有の弱く落ちた雰囲気の中で、私は長いベンチに座って考えた。
なぜ人は人を平気で騙すのか
など。
まさに考えても無駄なことを考えていた。
答えなんて昔から自明だ。
愚かだからだ。
そして、その手の輩は変わらない。いなくならないからいない場所に速攻、移動しろ。手傷を負いすぎないですむ逃げ方や対処の仕方を考えろ。関わって嫌な気持ちになったら即座に忘れろ。それも仕事だ。
そういうことを考えていたら暗くなる。考えるな、忘れろ、と自問自答すればするほど頭はそれでいっぱいになる。ピンクの像はいないと考えたら頭の中はピンクの像でいっぱいになるように。
悶々と考えながらの検診が一通り終わり、ヘトヘトになりました。
病院の待合で読もうと思っていた本が一行も読めなかった。くそう。ほんとに時間を無駄にした。
よろよろと昼ごはんどうしようかと考えて歩いていたら目の前に現れたある店
いきなり
「いきなり!ステーキ」の支店があった。
あの噂の▼
店の中にも外にも一人のおっさんがうろうろしている。
厚切りの牛肉ステーキの定食がなんと1100円~食べられるという。
安いではないか。
猛烈に肉が食べたくなった。
おばはん一人でステーキ。上等だ。
中に入ったら、OLらしき人も一人でいるのがチラホラ。
席も一人用のカウンターばかりである。ギラギラとした目つきのオッサンとオバハンと姉ちゃんと兄ちゃんが一人でステーキをかっくらっている。
その光景は異様だった。
ステーキは200g~である。最小でもかなり量がある。
糖質制限しようとライス抜きできますか?と聞いたら、100円引きで出来るという。
紙エプロンを渡された。隣の席に一人のオッサンが鼻息荒く座る。
でも、隣との距離はかなり離されている。
ステーキが来た。
すげえ
モウモウとけむりを上げながらステーキが来た。
まさにこれは
いきなりステーキ
が来た!と言っていい迫力なのだ
これで200gですぜ。奥さん。サラダとスープもつくぞ。ライス(私はライス抜き)も。
めっちゃレア!めっちゃ分厚い!これを好きに火を通しながら食べるのだ。
うめえ!
上からたっぷりのソースを好きなだけかけると、ジャ~とまた煙る!
はじけ飛ぶ油が紙ナプキンを一気に汚す。
美味い!やばい!うますぎる!
ワインの広告が目の前にある。
つい頼んでしまいそうになる。よく練られた店舗です!!
段々元気が出てきた。
腹からモリモリと力が湧いてくる。
隣のおっさんもそのまた隣の姉ちゃんも、うほ~!という声を挙げている。
一人で来ている人が殆どなのですが、不思議な連帯感!
美味しいの共感!
そのポジティブで生命力のある感情の伝染、電波力といったら!
家族連れもいた。小さな男の子がワアワア言いながら肉にかぶりついている。
病院の暗い空気とは真逆のパワーがそこにあった。
圧倒的な強さ
弱弱しい病気への不安感やメルカリの悪辣客から来た人間不信 落ちた感情が
肉で一瞬で
吹き飛ばされた
吹き飛んだんです!肉おそるべし!
これぞ、生だ!肉は生だ!
精だ!聖だともさ!
「ごっちそおさまあ!」
と別のビジネスマンが満面の笑顔でレジにお金を置く。
ありがとうございました~!と高い声の艶々したウエイトレスの女性。
一気に肉を食べ尽くしたら、世界の色が変わっていた。
空が輝いていた。
世界は美しい。
ありがとう「いきなり!ステーキ」さん。
暗闇のパワーになんて負けるか。
老いるのも病気も怖い 死は怖い けれどそれに引きずりこまれるものか
老いるのが怖いか 肉を食べて若返れ
病気が怖いか 肉を食べて体力を付けろ
死が恐ろしいか ステーキ食ったら忘れるぞ
孤独が怖いか まわりも肉を1人で食べているが寂しくないぞ
闘魂だ 筋トレをしてランニングをして力こぶを作るのだ
そしてまた検診に来て落ちそうになっても美味いものを喰って吹き飛ばしてやるぞ
希望の絵を 虹のような希望の色で 生きる喜びを描こう 自分を誰かを励まそう
あの客も倍出してでも買えばよかったと泣くようなものを作ろう
もし人生には必ず終わりがあるなら、私たちが生きている間、愛と希望の色で彩らければなりません byマルク・シャガール
やっぱ肉はいいぞ

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