張り紙の求人には「まかない付き」「食事付」が豊富
町の求人広告ってつい見てしまいませんか?
昨今は、インターネットで豊富な求人情報があるんですが
ちょっとしたアルバイトなら、近くにこしたことはないですよね。
求人を出す側も、無駄な交通費や広告代を払いたくないことがある。なのでシンプルに張り紙で募集する。意外に応募あるらしいです。みんな見てるんですね。私もよく見てしまいます。
まかないつきというのには私、めちゃめちゃ弱いです。特に中華料理店。
まかない万歳!
想像してしまいます。ランチタイムに、元気に働くおばちゃんのホール係の私、常連さんも一杯いて、楽しい会話。油の匂い。頑張ったあと、テーブルのはしを借りて、今日のAランチを食べる。ゴマ油の香りと炒め物、ごはん、ザーサイ
店長の陳(?笑)さんが、おかわりするかい?なんて優しく聞いてくれる!うわー楽しそう!なんて
実は先週うっかり電話して応募しかけちゃいました。とても美味しい中華料理店なんで、きっと「まかない」も美味しいに違いないと!もう募集枠うまってしまったそうで残念でしたが。
あの店の名物まかない というのもよくテレビで取り上げられるし、実際、美味しい店は、まかないも相当美味しいでしょう。食いしん坊の私は一石二鳥と飲食店で働きたくなるのです。
私は手荒れがするし、自営の本業があるんだから、絶対続かないでしょう。濡れた布巾で台を拭くだけで数日したら手荒れしてしまうので、雇ってくれたお店にも迷惑かけてしまう。以前も飲食店での水仕事をきっかけに体調が崩れてしまって大変な過去があるのに。募集枠が埋まっていて良かった。。。
自分って懲りないんだなあ、とあきれてしまいます。それほど、飲食店接客が自分でも好きなんだなあ、と思います。
「まかない」という言葉の魔力は相当なものです。
だって活気があるじゃないですか。飲食店の接客って。食べるのは人間の根源だから。戦後の闇市だって食べ物が一番盛り上がっていた(ような気がする)その生き生きとした現場で供される、従業員のための食事、まかない、というのに憧れてしまいます。
「まかない」付きという条件でも食べられない場合がある?!
しかし、飲食店の雇用関係は曖昧で大量の水仕事があるうえ給与が良くないとか、ブラック環境である場合も相当あるんです。なので、そのリスキーさが高いことを覚悟してバイトに入らないといけません。
店主のキャラと自分があうかというのも大事です。
多少サービス残業になっても(これは絶対あります、飲食店のほとんどが零細自営業者です。分単位でパートアルバイトに残業代なんて絶対出ません)そういう労働基準法がゆるゆるでも、労りや感謝の言葉をかけてもらえたりとか、そのまかないが美味しくて許せちゃう、あるいは店主店長が超イケメンや美女とか笑、だから多少無理を強いられてもいい、頑張って働くかいがある、とか。それは大事な要素です。
まかないでいじめ?江戸時代みたい
実は京都は古い体質の飲食店が多く、いじめの材料に「まかない」が利用されているところがいくつかありました。覚えがあります。
たとえば、あまり動きの良くない新人や学生に「就業後の朝ごはん無料」と銘打ってるくせに、わざと忘れたふりして食べさせなかったり、おばさん同士で結託して可愛い女の子の「まかない」の時間をわざと遅くしたり量を減らしたり、とか。
たぶん、丁稚のくせに奉公人のくせに、ごはんのお替りしやがって、とかの感覚で、新人バイトをこき使う、上下関係の気持ちがあるんでしょう。江戸時代かって感じですが、そういう感覚の年配者や老舗は多いです。
若い人に食事を減らすなんてほんとに残酷ないじめです。そんなところに当たったら、足のチリを払って去るがいいですね。食事でいじめるなんて、ひどすぎます。食い物の恨みはおそろしいのです。許してはいけませんよ!
思い出の「まかない」
私が学生時代バイトしたいくつかにもそういう処がありました。ですが、そういうところは入れ替わりが激しくブラック度も強い。私もすぐ辞めてしまった覚えがあります。
本当に沢山のアルバイトをしました。
西原理恵子さんの漫画「上京ものがたり」にある洗い場のバイト、客の食べ残しの唐揚げを食べながらやっていた、という気持ちがわかるんです。
お腹の減るつらさ
私も20代は食べるものがなくて、パンの耳ほんとに食べていたんです。二度大学行ってたのは私の勝手なんで仕送りがなかった。学費と下宿代でギリギリだった。
だから今だに「まかない付き」の求人に飛び付きそうになるのかもしれない。
素晴らしい「まかない」の店は沢山ありました。いじめどころか、慈善事業か?というくらい食べさせてくれた京都のお店や会社。
ある老舗印刷業のバイトは飲食店ではありませんでしたが、昼食は家族全員、バイトも含めて座敷で食べる。この会社の伝統で、昔から奉公人と一緒に食事していたなごりなんでしょうね。食事中も気が抜けないので、これはこれで窮屈でしたが。
しかし、女将さんや社長の奥様が、美味しい栄養バランスの整った食事をふんだんに作ってくださり、
ええ、もちろんほんまもんの京都の”おばんざい”ってやつです。おナスの”炊いたん”とか。お肉やお魚もちゃんとありました!おみおつけ、ぶぶづけ!
「おかわり食べる!?」と若い子に声かけしてくださり、「最近勉強はどう?」と聞いてくれたり社長も課長もバイトも皆で笑いながら腹一杯食べさせてくれる。
食後のみんなで飲む温かいほうじ茶がほろ苦く美味しかったなあ。
午前に失敗して叱責されたりして食欲がなくてもそういう食事の雰囲気で、午後は頑張ろう!と思える。
また、私が大学時代にお世話になった焼き肉店のバイトは、客に出せない端肉をたっぷりのキャベツと一緒に学生に「まかない」で出してくれて、野菜たっぷりの美味しい味噌汁も。もちろん、おかわり自由!
私は毎日ギリギリだったし、他の貧乏な学生さんも「朝も夜も食べてないから、ここでの食事だけが食べ物!」と言ってる子が沢山いた。
「もっと食べな!どんどん食べな!」と叫んでいた
まかない担当のおばちゃんの顔、思い出すだけでじ~んとします。
皿洗いのかわりに食事がタダになる店
漫画「島耕作」でもあのブラックと名高い京都の中華メーカーですが
それをモデルにしたであろうエピソードがある。
お金がない学生に皿洗いさせる。そうすると飲食がただになるというんですね。
今思うと、店からしたら、若い子、素人の皿洗いなんて役に立たないだろう。
そのシステムは店主の学生たち若者への愛なんです。
このシーンを読んだとき、涙が止まらなかった。
自分の空腹だった学生時代を助けてくれた「まかない」付きのバイト先を思い出して。
あの人もこの人も店長、女将さん、社長、先輩、上司、同僚の笑顔、やさしさ、当時はお腹が減るばっかり、減ったのを満たすことばかりに夢中で分からなかった。
お腹が減っているのが一番つらいから一杯食べさせてやろう、無理をしていないか、病気にならないか、勉強頑張れ、頑張れ、頑張れって。
今もこの皿洗い飲食無料システムはあるのかどうかは分かりませんが
食べることが働くことの目的なんですよね。今も昔も。コンビニやデフレで、食べることは事欠かない日本にはなりましたが。現代でも心の奥底にある本能というか、人間の根元的なものが刺激されるんですよ。
まかない食べて頑張ろう!
NHKのサラ飯という番組も大好きでよく見ます。
この番組は働いている人の食事を紹介するだけの番組です。色々なランチ、社食、弁当が登場します。
会社の社員食堂も「まかない」のひとつですよね。色々な百貨店でイベントさせていただきましたが、昼食でもぐりこむデパートの社食も楽しみのひとつです。
とんでもなく安くて美味しい、百貨店の社食。一食500くらいでたっぷり食べてコーヒーも飲めるところが殆どです。
「まかない」が美味しい安い仕事なら続きそうな気がする。
どんだけ貧乏になっても、食べること、眠る場所さえありさえすれば、またやっていけるかもしれない、リボーンできるかもしれない。いざとなれば、「まかない」のある職場にいさえすれば大丈夫かもなんて思ってしまうのです。
これからの社会は老若男女問わず大変になってくるから最低時給がどうとか言えなくなりますよ。雇用形態も多種多様だし。食べること引き換えの労働、ちょっとした手伝い、お金のかわりに まかない 食事、食材をっていう業務形態は出てくるかもしれない。
田舎で暮らしていたら、給与は高くないけど、野菜をかわりにいっぱい貰える、それで十分やっていけるということあるわけじゃないですか。
また専業主婦や家で仕事をしている人も、自分のために供する食事も「まかない」にあたるかもしれない。子供の残りものかもしれないけど、かけがえのない、大事な食事です。
失敗しても、落ち込んでも、仕事がだめになっても、貯金がなくてもお昼ごはんが美味しい「まかない」でお腹いっぱいになれば大丈夫!
よく寝て明日考えたらいいさ!と。
「まかない」はそんな「生きていくエネルギー」を支えてくれそうな気がするんですね。