「ああ、この絵も、この表情も!私、小さい頃に見た、読んだ!」と言う同世代は多いでしょう。いわさきちひろと、彼女の描いた子供たちは、いつも身近にあり、親しまれた。
絵本画家の、いわさきちひろ の生涯を扱ったドキュメンタリー・記録映画である。
ナレーションの加賀美幸子さんの落ち着いた声が淡々と心に響く。
27歳で、岩崎ちひろは、画家になる決意をして、長野県から上京する。戦後間もない、日本が混乱している時期である。
めっちゃ波乱万丈なんですが、ああ、感受性の強い、センシティブな人なんだな、芸術家ってこんな感じの人多いかな?と、「ふうん」と思って観ていた。絵で成功することは困難で、どちらかといえば、毒のない、かわいい、といった感じの絵で、伸び悩む。模索し続けるちひろ。若き日の残されたデッサンの線がすごすぎる。才能もあるが基礎力をこれでもかと培い続けた闘魂と努力の人であることがわかる。
転機は訪れる。30歳にして結婚し、子供を得てから、ちひろの絵はとんでもない芳醇さで輝きはじめる。
愛すること、愛されること、愛する人たちを守ること。ちひろは血の通った愛を得る。戦争と人間関係の失意の中で、飢え乾いた彼女の心にたっぷりの雨が降り注がれた。行き場のなかった情熱と才能は愛を得てほとばしり花開く。
特異な画風で孤立することが多かったという。それに臆することなく創作を続け社会活動を行った。今日守られている画家の著作権の確立は、いわさきちひろの功績である。優しい淡い表現にそうとは思わなかったが、力強い、自分の足で立つ女性だった。
自分の技術一つ腕一本で、独立し、家族を守り慈しんで、いかに幸福だったろうか。
描かれた子供が無垢すぎて、正直なところ、目をそらしたいような気にもなる。それほどまで、圧倒的な存在感で迫ってくる。
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