治療が終わりつつある
自分は治療も終盤である。今や体力も回復し、社会生活を取り戻している。苦しんでいた日々を忘れる日も多くなった。
雪が降ってはやんで、ひんやりとした風が頬にあたり、辛さよりも心地良さが感じられるようになった昨日
過ぎ越したのだ
とようやく思った。
強烈な印象がある病気
樹木希林さんだったか、雑誌のインタビューで
迫力のある病
と称したキャンサー。
大きな存在感で通り過ぎた。
今は楽観的でいつつも、同時に深刻な澱みのような気持ちも依然としてある。
その嵐の跡は爪あと?目覚め?変革?破壊なのか、創造なのか?今だもって分からん。
数年たったら「あれはこうだった」と思い出すことだろう。
で、この癌患者と医療者を扱った映画
「いのちがいちばん輝く日~あるホスピス病棟の40日~」(ドキュメンタリー?)。
真正面、病気がテーマ!観て平静でいられるかな?思った。が、観たいな、という気持ちが強かった。
舞台であるヴォーリズ記念病院。故郷の滋賀県近江八幡の病院だもんね。有名なホスピスのお医者さんがいるって噂には聞いてた。
ホスピスとは
ホスピスとは、終末期医療や緩和医療が行われる施設である。対象は主に末期の癌患者。
ホスピスという言葉が巷で聞かれるようになって久しい。しかし、具体的にどんな光景でどんな医療が行われているか、その実態はぜんぜん知らなかった。
こういう場所だったのね。
この映画のように、これほどまっすぐに、有りのままに撮影されたことはないだろう。
映画『いのちがいちばん輝く日 -あるホスピス病棟の40日-』予告編
客席はまばらだろう、と思ったのに、満席でした。
癌は今や身近な病、日本人にとっては、まさに現実で、関心が持たれているのね。
まだまだ発展途上の状況であるホスピス。そのあり方には賛否両論あるだろう。現実には、この病院ほど丁寧に患者に寄り添うことは国民全員には不可能だろう。そして皆が皆、こういった医療を望むかといえば、そうではないだろう。宗教的な問題もある。
きっと観たら「死」について真正面から考えざるを得なくて落ち込むだろうと覚悟していたのに…そうではなかった。死の影よりも生の光の方が強かったように思う。不思議な暖かい光が画面から溢れていた。これからどう具体的に「生」きようか、ということに思いをめぐらされる映画だった。
映画に映された医療者、患者、その家族、宗教家たち。彼ら彼女らの静かで真摯な佇まい。その一こま一こまが、どう「生」きるかを問いかけてくるのだった。
終了したら、各所で、自分の知り合いの家族の誰さんやカレさん(たぶんガン患者)の話がされていた。
暗い顔でなくて、優しい顔で、あちこちで熱心に話がはずんでいた。この映画、口コミで広がっていきそうな気がするよ。
近江兄弟社、ヴォーリズ先生のこと
最初に病院の創始者、ヴォーリスさんの説明がされていた。大河ドラマ「八重の桜」は幕末明治が舞台ですが、この時代の外国人といえばクラーク博士さんがいます。
同じくアメリカ人のウィリアム・メレル・ヴォーリズは、その時代の宗教家、建築家さんです。あの近江兄弟社、メンソレータムの会社を作った人、といえば分かりやすいでしょう。明治期の建築といえば、東京駅をはじめ、いかにも、新時代!という感じの辰野金吾を思い出す。
ヴォーリスさんの建築物は灰色で地味なのが多い。でも、そこにいるとほんわかと幸せな気持ちになるのよ。癒される建物です。
彼は、外国人差別にも負けず太平洋戦争中にも日本にとどまり、布教をし、日本で亡くなられたのでした。信仰と信念、愛がなくてはそういうことは出来ない。ヴォーリス記念病院と近江兄弟社は、そういう精神が息づいている場所です。
聖路加の日野原先生といい、キリスト教の医療者は芯があるなあ。