ごきぶりホイホイの発明者の方が亡くなる
世間はiPS細胞のノーベル賞に湧きたっていた昨年のことである。ある訃報が小さく流れた。
アース製薬元常務の木村碩志氏が逝去されたというのである。
「?一体だれやねん?」
その方はなんと、あの「ごきぶりホイホイ」の開発研究者。
詳しくはこちら
「ごきぶりホイホイ」とは何か
世の中には研究者と呼ばれる人たちが沢山いる。高学歴でいかにもちやほやされているような印象を受けるが、それは一握りで殆どの方々は陽の目を見ないような実験と検証を幾度も何千回と繰り返し、僅かが商品化採用される。ひとつの成功の影には、無数の資金と努力と汗が隠されているのだった。
「ごきぶりホイホイ」とは、言わずと知れたゴキブリを捕獲する紙箱である。知らない日本人はいまい。少なくとも(現時点では)スパコンやiPS細胞より日本人と主婦に愛され役だってきたであろう「ごきぶりホイホイ」。
研究者達は数十万匹のゴキブリと寝起きし、この製品の開発に取り組んでこられたのだった。
製品化・ネーミングの経緯も面白い。
こちらに詳しい▼
ごきぶりホイホイ ニッポン・ロングセラー考 - COMZINE by nttコムウェア
「ごきぶりホイホイ」を組み立てよう
昨年台所で巨大なゴキブリに会うこと数回。「きゃ~」と叫ぶ年でもなし、さりとて電撃撲殺するほど体力もなし。あの「ごきぶりホイホイ」を何十年ぶりか購入してみました。
リンク先によると「ごきぶりホイホイ」は進化発展してきたようだ。チューブで誘因物質をなすりつけていた時代もあったなあ。ゴキブリの方も抵抗力のある遺伝子のものが今や進化しているだろうし…。現代的な商品となっているんだろうか?と期待しつつ封を開けてみた。
基本的な構造は昔と変わっていないようだ。ゴキブリの家と匂いの素。ゴキブリを匂いでおびき寄せ、ペタペタつく罠をしかけ、家から出られないようにして、自然死させる、というのが「ごきぶりホイホイ」の基本方式だ。
爽やかなペパーミント色のパッケージ。買うのは圧倒的に主婦層であろう。女性達が買うとき不快にならないように、ゴキブリをキャラクター化しつつ、分かりやすく清潔感のある包装に仕上げている。
中からどっさり組み立てグッズが。5個作れてなんと300円程度。なんて安いんだ。中にはゴキブリの家の他に、「強力誘引剤」(ピンクの袋)と「足ふきマット」が入っている。
「足ふきマット」にはいちいち、ゴキブリキャラが印刷されている。足ふきマットというネーミングがすごい。ゴキブリの入ってくる入口に張り付けるのだ。これは文字通り、ゴキブリの足を拭いて、油分や水分をとり、ゴキブリが粘着シートについて捕獲しやすいようにするというのである。なんと芸の細かい商品なんだろう。
「強力誘引剤」は
えび、ビーフ、キャベツにオニオンetc、キッチンにあるゴキブリの好きな素材を再現した強力誘引剤です。ゴキブリは、つられるようにホイホイ、ハウスの中へ!
とある。匂いを嗅いでみたら、ふんわりと何か香る。
肉くさいような玉葱くさいような。
バーベキュー味のポテトチップスの匂いに似ているかもしれない。
右の画像はゴキブリ目線で撮ってみた。
いい香りがして、よい角度で足ふきマットもあり、私がゴキブリなら吸い込まれるように入ってしまうだろう!
最後に屋根を作り、
ゴキブリの家「ごきぶりホイホイ」の完成です!
捨てやすいように、上につまみもついている。
う~ん、素晴らしい。
特にすごい点は、毒薬で殺したりせず、あくまで、動けなくさせて餓死させる、というところ。なんて間接的かつシンプルなシステムなのだろう。
紙箱を置くだけでいいのだ。
エコで環境にも優しい!これが世紀の大発明と言わずしてなんといおう。
少しだけ苦言を。
「組み立てる」って作業がめんどくさいのよ。最初から置くだけっていう商品にはならないかしら?それから、この赤い家のパッケージについて。昔からマンガちっくでクドクドしたデザインだけど…。男性目線でほらほら効果あるでしょうって感じ?昨今の雑貨ブームでナチュラルオシャレな台所にしてるのに、このいかにもな箱があったら、せっかくの雰囲気台無しだわっ
え?オサレな主婦は普段から掃除に余念がなく「ごきぶりホイホイ」を使うことはない?あ~そうですね。ほほほ。
ごきぶり駆除系のコマーシャル
最後にゴキブリ駆除関係のCMを集めてみました。
岡本夏生さん…。
音楽がいいですね
テクノポップとヒーローがかっこいい
親子を登場させているところが涙を誘います
このゴキブリホイホイにしろ、「生き物」を「殺生」する道具なのよね。面白いCMも生き物を殺すという視点からいえば、残酷よね。こうまで殺戮を全面に出しているのはゴキブリ退治のCMだけ。命を大事に、と世間で言っても、ゴキブリは別格なのね。しかしゴキブリは主婦・女性の大敵。複雑な心境になるわ。
吉田秋生さんの漫画だったかな。昔の短編で。ゴキブリが変身している同居人の話。切ない物語だった。
平和な日本、会えば瞬時に殺意を抱き敵対する、という相手に出会うことなどめったにない。ゴキブリや蚊は数少ない「明確な殺すべき相手」。かつて捕食していた肉や魚は既にパッケージングされてスーパーに並び、自分の手を汚して殺害することもなく、命の大事さを感じることのない今日この頃。老若男女等しく「ひいいっこのこの死ねやあっ」と即決させる相手はゴキブリくらいなものです。
ストレートな殺意を健やかに発散することのできる、それがゴキブリ業界なのかもしれません。