更年期から墓場まで

子梨・更年期BBAの私見偏見吐露雑談ブログです。

和田竜『村上海賊の娘』一気読みしたよ!木津川合戦と本願寺

本屋大賞受賞作「村上海賊の娘」

この『村上海賊の娘』、本屋大賞を受賞したのは、2014年のことです。

作者の和田竜さんと女優の綾瀬はるかさんとの対談をその頃読んだので、すぐにでも主演で映画化するかと思いきやまだまだかかりそうですね。

同作者の「忍びの国 (新潮文庫)」は2017年に嵐の大野智さん主演で映画公開が決まっています。

村上海賊の娘(一) (新潮文庫)

村上海賊の娘(一) (新潮文庫)

この3日間、あまりの面白さに読むのが止まらず、新潮文庫全巻を一気に読みましたよ!

主演女優は見当たらない?

累計200万部の売上を突破したというのだから、仇おろそかなものは作れないのでしょうか。非常にキャラのたった登場人物ばかりだし、主人公の景(きょう)を演じられそうな女優が今のところ思い当たりません。

作者と対談したくらいだし、綾瀬はるかを念頭にして物語を作ったのではないかとも思うのです。が、青臭く血の臭いのするようなすごみのある二十歳の女海賊を演じるには、30過ぎの綾瀬はるかはやはり時期を逸したのかもしれません。杏も非常にイメージに似通っているんですが。やはり20歳の瑞々しい痛みは、20代に演じてほしいとも思います。広瀬すずあたりも思うのですが、かつての「あずみ」の上戸彩のようになってしまいそうな小柄な童顔がネックです。

何よりも咆哮し、闇をつんざくような、モーゼが海を割るかのごとくのアクションをしてほしいものです。アイドルの華奢な身体でCGを使うのは絶対ご遠慮願いたい。

なので、現在スピリッツの漫画版の絵もあまり好きません。海戦描写は迫力ありますが、景のイマドキのアニメ顔と身体が、あまりにもオタク好みすぎだ。童貞とロリコン向けの女海賊なんてゲームの中にだけいてほしいです。

原作主人公は、童貞男子が好まないような大女、筋骨がある身体、凄みのある生命力、海底から湧き出るような残虐かつ蕩けるような色気を持たなくてはいけません。ロリコンぽい顔で、不自然な巨乳を揺らしながらRPGゲームのように不自然にアクションを繰り出すなんてまっぴらごめんですわ。

それほど、大人の女子の胸をすくような強く新しい女性像が描かれた原作です。

ウシジマくんの映画版金融屋を演じる高橋メアリージュンはいかがでしょうか。一年かけてメアリーに筋肉を付けまくってもらいたい。彼女が舌なめずりしながら悪党の首をなぎ倒すのを想像するとドキドキします。

海上戦がすごすぎ

物語は1576年(天正4年)戦国時代。石山本願寺と織田信長軍の紛争。

第一次木津川合戦の顛末が描かれております。

本願寺の一向一揆が現在の大阪城に籠城し、破竹の勢いの織田軍は包囲封鎖します。

当時の一向一揆は国を変えるほどの一大勢力ですが、門徒の兵は百姓の集まりで戦の素人です。海を封じらたことで兵糧攻めを執拗に行われ、大阪の本願寺は餓死寸前。織田軍に堕とされんとする目前でした。

しかし本願寺に加担したのが現在の広島県を制覇していた毛利家です。

毛利家は本願寺に海を通じて5万石という大量の兵糧を運び入れようと画策します。しかし、海上は織田軍によって封じられている。そこに投入されたのが村上水軍。

題名通り、村上水軍の娘が、この木津川合戦のキーウーマンとなります。

ぜひぜひ読んでみて。

合戦シーンは読みだしたら眠れない!関ヶ原などの戦国合戦は血湧き肉躍りますが、海上戦は更に野趣と迫力があります。

後半の1巻を費やしたこの海上の戦闘は、大阪の海賊VS広島の海賊 といった体で、今年の広島カープを彷彿とさせ、涙が止まりません。

海上の肉弾戦の戦闘を映像化するのは困難でしょう。ぜひじっくり準備していただいて、ゴジラ以上に良いもの、これぞまさに日本映画というものにしていただきたい。

挿絵や表紙も素晴らしい

週刊新潮で連載されていたこの『村上海賊の娘』ですが、時々覗いていた楽しみは挿絵でした。

文庫化単行本化するとこの挿絵が出てこないのは残念ですね。表紙だけですから。

週刊誌で時代劇小説をやると泥臭い劇画風の挿絵になります。中高年以上はそれがお好きでしょうが(私も中高年ですがw)勧善懲悪・剣豪活劇、そして女はクノイチ、耐える武家の妻などという古臭いイメージになります。

この『村上海賊の娘』の両軍ともにイキイキと動くキャラたち。

『のぼうの城』でも描かれた底辺ともいえる民衆の喜怒哀楽。それに対する温かい眼差しが描かれていました。

www.hagipu.com

それこそが作者和田竜さんの視点なのでしょう。史実を大事にし、丁寧に綴られた文章から弾け踊る民衆の喜怒哀楽。歴史を作ってきたのは名の残る武将たちだけによらない、まさに民によるものだと。裸足で笑顔でかけぬける、百姓や猟師の気持ちを微細に描きます。

本願寺の籠城戦に信仰という動機だけで無謀に参加する、老人や子供の純粋さ、そして愚かさ。彼らに感情移入するこれまた愚かな若い姫ごぜ。

迷い潰され青臭く中二病ともいえる苦悩を持つ不安定な主人公は、まさにイマドキの若者です。自分の娘を妹を抱きしめて応援したいような愛おしさと脆さがある。

この輝くような若さと優しさと愛情。海の光。

それは古臭い劇画調では絶対にいけないのです。この2巻の表紙は拡大コピーして持っておきたい。泣きたくなるほどの瑞々しさと青春の空気が溢れているではないですか!

村上海賊の娘(二) (新潮文庫)

オッサン読者しかいない週刊新潮でこの平沢下戸さんのイラストを採用したのがすごい。

だからこそ、時代劇ファンのみならず、この小説は若い世代にも圧倒的支持と共感を得てベストセラー入りしたのでしょう。

石山本願寺=大阪城

この小説の舞台、石山本願寺。「大坂本願寺」「大坂城」ともいわれます。

石山本願寺 - Wikipedia

そう、舞台は現在の大阪城なのです。天王寺だの今も知る地名が出てきて、あそこがどうだったあのとき此花区は海の下なんだと「ぶらタモリ」のように地形についても楽しく想像が止まりません。

2016年大河ドラマ「真田丸」はそろそろ終盤を迎えます。大阪城を舞台とした最後の合戦が始まります。

同場所、大阪城とその海を舞台にした、この石山本願寺。その木津川合戦こそ、まさに籠城戦の真骨頂のはじまり醍醐味があります。あの大阪という地の業の深さ、知略を感じさせます。

大阪の人々、特に一番大阪らしい、泉州のサムライたちが沢山出てきますが、彼らの面白み(小説はそれを「俳味」と呼びます)陽気さ、前向きさ強さが存分に描かれています。まさに大阪は今も昔も愚かでオモろい人々が大騒ぎする土地なのです。

大阪という都市のもつ底力はその俳味のあるメンタリティにある。

広島と大阪にルーツを持つ和田竜さんが、どちらの土地にも肩入れしたいという愛が伝わってきます。カープもタイガースも応援しているぞ、というような。

この素晴らしい籠城の地、大阪はこうして幾度となく戦火にさらされます。

真田丸の最終回、大阪の陣を前に読むのは実に一興だと思います。

宗教を信じるものの強さ怖さ脆さ

また一向宗の強さ、本願寺の歴史を詳細に知ることができました。

11年も本願寺と信長は戦争をしていたというのです。武家と武家ではなく、一宗教(戦闘員は門徒です。百姓が主)が天下の信長相手に11年も戦ったは恐るべきことです。

宗教を信じる民衆は強いです。門徒は主家関係なく、日本中にいて、戦国時代の一大勢力となり、信長を小説のごとく苦しめます。

こんなことがあるから比叡山は焼き討ちされ徳川政権はクリスチャン弾圧をしたのでしょう。シンプルなで純粋な宗教は命知らずな統率集団を作り、国家を揺るがします。浄土宗はとても民衆的霊的な教理です。大乗仏教や禅とは違い、知性はいらない。キリスト教やイスラム教に近いものを感じます。カルト化して力を持つのはとても簡単です。

現在のISやキリスト教原理主義者たちの台頭に通じるものがあります。

クリスマスもハロインもお宮参りもごちゃまぜの典型的日本人私には、その純粋性には理解しがたいところがあります。

この小説が日本という国が今後大阪城のように籠城し、どう戦いぬくかという示唆に富んでいるのではないかと思うのは穿ちすぎでしょうか。日本列島という城を囲む水軍と姫はいるのだろうか。

本願寺とは何か

京都に巨大な敷地を占める西本願寺と東本願寺。全国の門徒の信仰の拠点です。ただの観光地とは違う、迫力があります。

なぜ西本願寺と東本願寺になったのか、という経緯も小説にはしたためられています。今まで漠然と見ていた京都駅前の本願寺の地。それが胎動する歴史の結果そのものだと存在感を新にしました。

また私が大好きな京都の和菓子「松風」はこの本願寺の籠城戦で門徒たちの工夫により作り上げられたものです。

www.hagipu.com

松風(まつかぜ) 京都の和菓子☆ドットコム

亀屋陸奥(かめやむつ)の松風(まつかぜ)【京都の和菓子☆ドットコムの亀屋陸奥(かめやむつ)の松風(まつかぜ)の紹介】

当時は飢えをしのぐためのものでしょうが、現在は洗練されほんのり甘く美味しいです。京都土産におすすめです。歯ごたえのある滋味は当時の籠城を忍ばせ、なんとも感慨深い。

kameyamutsu.jp

村上海賊の娘(一) (新潮文庫)