更年期から墓場まで

子梨・更年期BBAの私見偏見吐露雑談ブログです。

最も新しく最も古いメディア論「うわさとは何か」を読む

媒体(メディア)そのものこそがメッセージである

うわさとは何か - ネットで変容する「最も古いメディア」 (中公新書)

メディアはメッセージである

とマクルーハンが述べて久しい。(マーシャル・マクルーハン

コンテンツは中身こそが重要であり、それが100%であると主張する人はもはや少ないだろう。

中身(コンテンツ)がメディアを左右するのではない、媒体(メディア)こそがコンテンツを作る要因である。

テレビや映画、携帯電話にスマートフォン、インターネット。そのメディアが内容を左右し、創造する。

たとえば、数多くある「まとめサイト」。インターネットと2ちゃんねるがなければありえない。2ちゃんねるという独自のシンプルな情報伝達掲示板。そのメディアによってでしか作り上げられないものが「まとめサイト」である。この情報コンテンツはテレビでは決して成立しない。ツイッターによる「まとめ」も同様である。

独裁者ヒトラーは、ゲッペルズが展開した映画という媒体(メディア)を利用したから人心を支配することが出来たのだ。(大勢を集めて巨大画像を見せる)これがテレビというメディアを利用したならどうだったろう?菓子を食べながら家族で談笑して見るお茶の間の箱なら、「ユダヤ人を抹殺せよ!」と口角をいくら飛ばしても、ヒトラーはただのチョビ髭の親父にしか見えない。洗脳は失敗する。

とある新興宗教の人の話を聞いたことがあるのだが、新人を勧誘するに、大勢の信者たち”だけ”で占められた、閉じた講堂に入れる。集会所などで(必ず外部者が入らないように閉じなくてはいけない)大きなスクリーンに演壇、舞台装置、そこに教祖や指導者を立たせ、酸素がすくなるなるような音響と音楽。その中で洗脳は行われる。そうしないと、完全勧誘できない、とのこと。それも「メディア」のあり方を利用した一例であろう。

オボカタさんのテレビ受け

一方、あの小保方女子の涙はテレビという媒体でこそ、輝いていた。

女優のような角度とフラッシュ。キャッチーなインパクト「STAP細胞はあります!」というケナゲな声色。あのテレビ画像を占めた美貌と存在感が人々を圧倒し、まるで女神のように心を捉えるのだった。

だが、インターネットにおける小保方情報や噂には、それはない。写真と事実だけを並べれば胡散臭い要素が満載である。文字化できる事象でのみ捉え、判断しようとする人には、彼女は詐欺師そのものになる。

ネットの彼女とテレビの彼女が拮抗している。

どちらが”本当の彼女”なのだろう?

(私は、理系の美女が大好きなので、テレビの彼女にまいってしまい、しばらく心酔していたが、最近ようやく、あ~自分が見る目がなかったわあ、と思った次第です。これは、テレビというメディアに有利な情報がネットによって破られた好例かもしれない。たくさんのメディアに囲まれている、という点では、現代人は、恵まれているのかもしれない。いろいろな色眼鏡をかけることができるからです。)

インターネットというメディアがなければありえない社会が到来しようとしている。

しかし、その新しいネットの中で飛び交う最も好まれるもの…それは古来から、変わることがない。

ゴシップ、噂である。

うわさこそメディアである。

この新書は、うわさを「最も古いメディア」と定義し展開して評じたものである。その斬新な論はスリリングで痛快だ。

作者は噂をメディアと言いきる。

ペンは剣より強し。口はペンよりはるかに強し

噂って「媒体(メディア)なの?」。

そうだ。噂こそ、口コミこそが一番強く、起源の古い情報伝達手段だ。

だからこそ、独裁政権、共産主義や古代の非民主主義社会では人々が広場で集まることを禁じたのだ。

どんな武力も、人々の口から伝達される地道なヒソヒソ話にはかなわない。

あのフランス革命も「アントワネット王妃は”パンがなければケーキ食べたらいいのに”と言ったんだって!」という口コミが王政を転覆させたのだった。(実際はそういうことは言ってなかったらしい)

最近の噂といえば、ツイッターやメールで伝達されることがもっぱらだが、

この本では、あの、石油ショックのトイレットペーパーから丁寧に紐解いている。そう、あのかつての中東戦争勃発で、なぜか、主婦たちがトイレットペーパーがなくなるという強迫観念に襲われ、大挙して買いに走ったというあの大騒動である。

おばちゃんってアホやね~なんて、彼女らを笑えるだろうか?

あの震災時、スーパーに食料品と水を買いに走らなかった人などいるのだろうか?放射能が消えると信じて、米ぬか水を飲んだ人々を!?何かにすがり、何かの情報を手にして、「動く」ことで我々は束の間の安心を得るのである。

最近では関西の篠山市、可燃ごみ袋が在庫切れ寸前 駆け込み買いが何故か起こった。いったい何の「噂」があの町を駆け抜けたんだろうか?

あれもこれもあの事件も、すべて噂(うわさ)からはじまった!

豊川信用金庫、はたまた、あの「口さけ女」事件も口コミのなせる技。そうそう、あのコックリさんというのも一つの「噂」みたいなものだ。コアラのマーチというお菓子に、ひとつ違う柄があればあればラッキーとか。女性や少女たちのコミュニケーションにはそういった流言ブームが欠かせない。炎上も、人々の興味と好奇心をひきつける娯楽である。

それらを利用した、仕掛けられた作られた噂というのもある。バブル以降、思い出せば、たまごっちブームは女子高生による口コミで流行した。ブログを利用した「ステマ」も噂を利用したマーケティングだ。

しかし、それらは秘められているから信憑性があるので、「さくら」のような文章はすぐに見抜かれてしまう。

だからこそ、2ちゃんで語られる、匿名の自称内部情報が「ここだけの話」=真実として広まる。たいていそのソースはあいまいで、真実であることなんて少ないのだけど。

最近の「小保方女子事件」では、2ちゃんで小保方さんらしき人が書き込んでそれが論文ねつ造の証拠だとか。ありえないが、あの人ならありえそう(?)で、なんとも興味をかきたてる。

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スマートフォンやパソコンの普及、SNS、メディアの媒体がいかに変容しても、これらに飛びついてしまう人々の心は普遍である。

日本や海外の、噂によって人々はどう行動し、変容するのか。この新書には、その事例が豊富に詳細に説明されている。そうそう、あんな噂、あったあった!と思いだして楽しむ。

それとともに、自身の情報に対しての向き合い方を揺さぶる。現代的コミュニケーションの海を泳ぐために必須の一冊。

うわさとは何か - ネットで変容する「最も古いメディア」 (中公新書)