更年期から墓場まで

子梨・更年期BBAの私見偏見吐露雑談ブログです。

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮

なんという題名なんだ!

欲求不満な私のようなオバちゃんの昼下がりの映画にはぴったりだな、と思い観に行きました。

これが面白かった。

かなりなかなか面白かった。

舞台は18世紀のデンマーク王室。イギリス王室の血を引く少女カロリーネは、デンマークに嫁いだ。

それはフランス革命の20年ほど前で、ヨーロッパ全土に啓蒙思想の気運がじわじわと高まっていた頃である。

バスチーユ・市民革命の導火線が付くグラグラ沸騰寸前のヨーロッパ。

デンマークとは(←そこからかっ)

デンマークってどこ?北欧ってやつ?もやもやと、頭の中でスウェーデンとかあの辺が白くもやもやと浮かぶ。

大きな地図で見る

ドイツのあたりだった。ドイツの半島だと思ってたとこがデンマークやった。ヨーロッパの人が日本を韓国や中国とゴチャゴチャにしているのが多いと憤慨してたが…そんなものなんですね。すんまへん。

映画中にドイツに領土があるとかプロイセン王国だとかのセリフがあった。デンマークはドイツとの関係でも複雑なものがあったらしい。かつては大国だったようだ。

よくある囚われ欲求不満女性の話なのか?

イギリス王室の美しい少女カロリーネ。彼女がデンマーク王クリスチャン7世に嫁いだのは15歳。結婚への夢膨らませて身一つで異国へ。そこで会ったのは、思いやりのない狂気に囚われた王だった。これが私の一生の伴侶なのか。絶望するカロリーネ。なんとか妊娠に至り後継ぎを産んで、虚しい日々を送る悲劇の王妃。しかし、ある時、彼女の前にある男性が現れる。知的でハンサム。新しい王室付きの侍医ヨハンである。二人の心は密かに通いあい、ついに…

あらすじだけだと、三文小説的な…身体が痒くなってくるような

主人公のカロリーネ王妃はルソーやヴォルテールなどの啓蒙思想に興味あるが、デンマークの検閲によって読めない。ヨハン医師が彼女にそれらの本をこっそり貸してあげる。そこには自由や人権という文字はあっても、王宮という牢獄に囚われた王妃には夢物語だ。団塊世代の女性には共感度が強いかもしれませんね。学生運動が盛んで、男女平等という思想だけが先走るけど実際は女が一生仕事するなんてほど遠く、結局は大半が専業主婦になり、夫とその親族に仕えるしかなかった。そういう現実と理想の挟間で私の母世代はルサンチマンがたまりまくったらしい。(しかし今は当然そうではない)

何かを彷彿とさせます。そう、あのベルサイユのバラのアントワネットとフェルゼン。ベルばらのデンマーク版?あれは少女マンガだから露骨な表現はなかったが、この映画には、それなりにHなシーンが出てくる。一昔前のレディコミの時代劇ジャンルみたいやなあ…と前半を見ていた。眠くなってきた。

私が日本人だからだろうか?日本の王妃というもの、たとえばこの18世紀の日本の妻なんて、人権なんてないも等しい。が、武士の妻としての誇りとかあっていざとなったら肝が据わっていて、こういう贅を尽くしたヨーロッパのお姫さまのヒロイズムなんてたいしたことないような気がするのだった。大河ドラマの見過ぎなのかもしれん。

後半がすごい

可哀そうな結婚生活と下卑た性描写がいくつか続いて、睡魔がますますおそってきた。

これがデンマーク本国で大ヒットを記録したなんて、正直デンマーク人はアホかと(失礼)。この映画のいいとこはコスチュームとHシーンだけなんかいなあ、と思いはじめたとき

だんだん展開がすごくなってきた。

受動的だった王妃は本物の性愛を知ってから段々自ら不倫に積極的になりついに妊娠してしまう。(そりゃそんだけやりまくれば孕むわよ)その子供を守るために鬼になり、かといって自分の「女」を捨て切れず、アヘン中毒になっていく。

不倫相手の男、王室付きの医師ヨハンは、王の心の友でありつつも、王妃との情事をやめられない。政治に介入しまくり、自ら思う啓蒙思想の実現をなすため、改革を強引に推し進める。彼は、ベルばらのフェルゼンとは違い、元々民衆相手の医者である。身分はまるっきりの平民である。泥臭くさすぎて悲恋物語のヒーローとしてはあまりにも不適切で危険です。

ベルばらのルイ15世が天然痘で死んだ。あの少女マンガとは思えない残酷な描写が脳裏に焼き付いている読者は私一人ではあるまい。あの恐怖の天然痘がヨーロッパで猛威をふるっていたとき、なんと、デンマーク国民には予防接種がなされる!医師ヨハンと王妃の画策によるものだ。背徳の不倫の関係が一国を救ったのだ。この不思議な矛盾した出来ごと。不道徳の中に花咲く啓蒙思想の実現。

この辺りからめちゃめちゃ面白くなってくる。

デンマーク王クリスチャン7世役のミッケル・フォルスガードがすごい


平民の医師が王室に入り込み、妻の心を奪い、なのに王の政治を補佐する。妻は自分を裏切っている。

道化のような王、クリスチャン7世

この人の演技がすごかった。ウィキには彼は統合失調症ではないかと書かれていますが、発達障害とかそりゃ何らかの病名がつくのでしょうが、ものすごく魅力があるんです。

このデンマーク王のナイーブな心の動き。残虐で弱くてヒッキーでメンヘラでエロエロ。なのに国民に心底共感し、憐れむ美しい心。目にやどる狂気と優しさと知性。その光が何度も入れ替わり、彼を愛さずにはいられなくなります。

正直、こんなかわいくてセンシティブな夫を差し置いて浮気をする王妃は最低で大バカだと思いながら観てしまいました。

完全に真実の主人公はこの人です。クリスチャン7世王です。姫川亜弓の吸血鬼カーミラです。

この人の演技がなければ、この映画は単なるメロドラマになり下がっていただろう。(案の定、王役のミッケル・フォルスガードはベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞してました)

実際、この王様は、国民にとても人気があったらしいです。

国家を揺るがす三角関係

映画は、後半に入り単なる昼下がり不倫ドラマではなくなった。

狂気の王クリスチャン7世 恋(エロ)に取りつかれたカロリーネ王妃 そして二人の心の友である啓蒙危険思想保持者ヨハン医師

この三角関係。複雑でスリリングな心理劇となっていく。

王は既得権益に群がる老中に言いなりになり、バカにされていた。しかし、ヨハン医師に励まされます。

あなたはバカではない。本当は優れた人だ。好きなようにやってみるのです。

と。信頼する者がなかった不安多き青年王はどんなに励まされたでしょうか。王はヨハンの助けを借りて治世に積極的になり、改革をどんどん推し進める。

医師ヨハンも、王を大好きだった。心の病というハンデを抱えながらも、溢れる才能と知性を持った王を心底愛していたのでしょう。なのに王の妻である王妃との逢瀬を重ねずにはいられない。恋とはそういうものかもしれん(とは私は思いませんが。サカリがついただけやろ?と思ってますが)。

王妃も王との性関係は持てないくらい心が離れているのに、夫を引き立てようと頑張ります。妻のことを「ママ」と呼ぶ夫。彼のことを実は本当は愛して求めていたのかもしれない。

三者の心が入り乱れ波打ち緊張し、盛り上がる。愛欲と友情と理想と狂気が複雑に絡み合う。緊迫したドラマに目が離せない。この人たち一体ど~なっちゃうの!?と。

そしてやがてヨハンは政治的野望を抱きすぎ、身の危険が及んで…

デンマークの民主化の一大物語だったのだ

映画の終盤には黒人奴隷の子供が小姓して登場する。実権を失った王と黒人の少年が手をつないでいる光景。なんとも哀愁があるシーン。

アメリカ独立は1776年、南北戦争は1861年からだから、この映画の時代は、産業革命を経て、アメリカは黒人奴隷によって国力を蓄えている頃。

理想や文字の中では人は自由だ。しかし女性も黒人も民衆も自由とは遠い。

自由であるべきは心のみにあらず!

とオスカル様は叫びました。彼女はフィクションの人物です。しかし、この映画はノンフィクション。実際の事件と人々のドラマを扱っているというから驚きもののき。映画リンカーンでも、現実に、法的に黒人が自由であるべきだと、尽力した大統領の苦闘が描かれていた。

自由と平等の実現を目指した人々。その血がデンマークでも流されたのだ。まさに国を揺るがす大不倫ドラマでした。

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮